canalでギフト用の紙袋をご利用いただいているカカオベンチャー『Whosecacao』の渡辺様に、スペシャルティカカオへの想いとその背景、デザインやパッケージに込めた意味についてインタビューさせていただきました。
ー『Whosecacao』のブランドやプロダクトについて教えて下さい。
『Whosecacao』はインドネシアやタイのカカオ農園と提携して「スペシャルティカカオ」を開発しているカカオベンチャーです。スペシャルティカカオは、スペシャルティコーヒーと近い存在として考えていて、生産や加工の工程を丁寧に管理することで生産できる、風味や品質の面で優れたカカオ豆であると定義しています。こうして輸入したカカオを国内のチョコレートメーカーさんや飲食店さんに提供しています。
また、カカオについて川上から川下まで、一気通貫で価値を提供するために、「スペシャルティカカオ」を生産するだけでなく、カカオを原材料とする製菓用材料や菓子の製造販売も行っています。インドネシアとタイで生産したカカオ豆は日本に輸入し加工するだけでなく、一部製菓用材料はインドネシア国立ハサヌディン大学と提携し、現地で加工をしています。
製菓事業をやる意義としては、開発した「スペシャルティカカオ」の個性を活かしたお菓子を自分たちで生産しお客様に直接届けてお客様の声や反応を直接知ることで、カカオをブラッシュアップしていくことができます。「スペシャルティカカオ」は風味が豊かで複雑なので、他のカカオと同じように使ってしまうとその風味が活かせず全く違う味わいになってしまいます。だからこそ、自社で展開するお菓子ブランド「CROKKA」では、「スペシャルティカカオ」を使用したお菓子のロールモデル的な存在として、カカオベンチャーだからこそできる表現をしています。
ーどのようなきっかけで立ち上げられたのですか。
代表の福村が学生の頃からチョコレートが好きで、起業したいという想いもあったのでチョコレートでの起業を考えていました。ダンデライオン・チョコレートで修行しチョコレートの基本について学んでいたのですが、ある人から「チョコレートの上流である農園を見たことがないのに事業をやろうとしているのか」と言われたことがきっかけでした。
チョコレート農園に伝手がなかったので、まずAirbnbでカカオ農園をやっていそうなところを探して実際に行ってみたところ、そこはカカオ農園ではなかったのですが紹介してもらうことができ、なんとかカカオ農園にたどりつきました。
インドネシアの農家さんはとても熱意があり、美味しいカカオを作っていると自負していたのですが、実際に食べてみると全然美味しくなかったのです。理由を考えていったときに、福村はダンデライオン・チョコレートにいたときに様々な良いカカオを食べていたのですが、農家さんたちは美味しいカカオを味わったことがなく比較対象がないということに気づきました。カカオの発酵が十分にされていなかったり、地べたにカカオが並べて乾燥させているなど、日本では想像できないような扱いがされていてとても衝撃的でした。
そういった状況を見たときに、カカオのバリューチェーンで川下の方を見ればプレーヤーが多く洗練されたお菓子が出回っていますが、川上であるカカオ生産については改善するべき課題がまだたくさんあることに気づきました。そこで、川上である農園からカカオ業界を変革していきたいと考えました。
ーなぜカカオ生産はこれまで変革されてこなかったのでしょうか。
インドネシアでは、流通の仕組みに大きな問題がありました。インドネシアでは、地域ごとに生産したカカオを農協が買い取り、全て混ぜてしまっていました。高品質なカカオを頑張って作っても同じ価格で買い取られてしまうため、農家さんにとっては利益につながらず結果としてモチベーションが出ないのでカカオ開発が進まないという負のサイクルになっていました。農家さんの中にはカカオ生産をやめようとしていた方も多くいました。
そこで、その仕組みから改善していく必要があると感じ、思いに共感してくれた農家さんと一緒に高品質なカカオを開発し、直接買い取るようにしました。高品質なカカオを適正価格で買い取るので、農家さんにとっても利益があり、高品質なカカオ生産へのモチベーションを上げていくことができます。また、お客様もより良いカカオを楽しむことができるため、結果として継続的にカカオが買われる仕組みを作っていくことができます。
高品質なカカオの生産には、丁寧な生産管理と、川下から川上への情報の循環が必要だと考えています。生産管理では、害虫対策や発酵方法を丁寧に指導したり、カカオを発酵させる時の酸性値や温度を管理するデバイスを開発・実験運用しています。代表もコロナ禍までは一年の半分を現地で過ごすなど、丁寧にサポートを行っています。また情報の循環では、「CROKKA」を通じて得たお客様の声や反応を農園に還元したり、CROKKA以外にも日本の高品質なチョコレート菓子を実際に農家さんに味わってもらったりしています。
情報を視える化し、情報の非対称性をなくしていくことで生産者とお客様の距離を縮めていくことができると信じています。現地農家さんのリーダー的な存在のメンバーにインタビューした際に「僕たちはチョコレートの楽しみ方を学んだんだ」とエモーショナルに話してくれたことが、そうした取り組みの意義を感じさせてくれました。
ー『Whosecacao』が目指す高品質なカカオとは、どのようなカカオでしょうか。
『Whosecacao』が目指す「スペシャルティカカオ」とは、カカオ豊かな風味を味わえる、品質管理を丁寧に行ったカカオです。多くのチョコレートは砂糖やミルクの成分が多く、カカオの風味をごまかせてしまいます。そうではなく、カカオの豊かな風味を活かせる商品こそが、『Whosecacao』が目指す品質です。
とはいえ、カカオの風味は、一つに決められているものがあるわけではなく、様々な風味があります。コーヒーはフレーバーホイールで様々な風味が表現されているように、カカオにも甘い・苦いだけでなく、クランベリー風味やメロン風味、珍しいものではトースト風味などもあります。どれが美味しい・美味しくないということではなく、それぞれが特徴的であり、カカオが持つ多様な風味を楽しむ文化を根付かせていきたいと考えています。
ーデザインやパッケージにはどのように反映していますか。
『CROKKA』のロゴには、カカオから新たなお菓子の形を提案していきたいという想いを込めています。生産者ー加工者ーお客様の3つの要素を表す三角形、素材の個性から現れる一つのカタチであるお菓子を表す四角形、カカオの持つ可能性を表現するどんな形になることもできる丸でロゴを構成しています。
また、宝石の多面体のような模様は、カカオニブが割れた時の形と食感のシズルを表現していて、それらが多様な形でつながっていくことで、様々な味わいを持つ多様なお菓子が生まれていく様子を示しています。
ーcanalで紙袋をご利用いただいてみていかがでしたか。
コロナ禍前になりますが、チョコレートのイベントで紙袋をお客様にお渡ししようということになり、気になっていたcanalさんに相談しました。12月にご相談して1月末に納品という短納期でしたが、複数パターンご提案いただいたり、実際の印刷サンプルなども手配していただくことができました。要望に対して懸念事項もしっかりと伝えていただき、デザインもとても精度高く再現されたサンプルを見ることができたので、とても安心してお願いすることができました。
ーこれから『Whosecacao』をどのようにしていきたいですか。
今まではカカオ好きの方に向けた商品をメインに作っていましたが、これからはカカオの個性を活かしながらもより多くの方に手にとってもらえるような商品開発をしていきたいと考えています。多くの人に手にとってもらうことで、その声や反応をカカオ農園に届けて、より良い「スペシャルティカカオ」を農家さんと一緒に開発していきたいです。
こうした取り組みを通じて、日本や世界のカカオのレベルを底上げしていきたいですし、「スペシャルティカカオ」が当たり前なんだという世界を作っていくことで、カカオ農家さんが報われる循環を生んでいきたいと考えています。