canalでパッケージをご利用いただいているクラフトジンブランド『HOLON』プロデューサーの堀江様に、ブランドコンセプトに込められた想いや、デザインやパッケージへのこだわりについてインタビューさせていただきました。
目次
クラフトジンを通して自分の内面と向き合う時間を
ー『HOLON』のブランド、プロダクトについて教えて下さい。
『HOLON』とは“ととのえる”時間に寄り添うクラフトジンブランドです。ストレスや疲れを抱えやすい現代人にやさしい東洋のハーブやスパイスなど9種類のボタニカルを調合しています。心と身体の調和をテーマに、その味わいを保ったまま口あたりのよさを引き出すため、ジンとしては低アルコールである約35度ほどに仕上げていて、炭酸水などで割るとアルコール度数およそ5〜7%ほどで楽しめるのが特長です。
クラフトジンを通して、自分の内面と向き合う時間がそれぞれのライフスタイルのなかで生まれていくことを目指してブランドを立ち上げました。
これまでアルコールを飲むシチュエーションとして、多人数での飲み会やクラブなどアッパーな雰囲気で消費される飲み方が主流でしたが、そういった飲み方を変えていく提案をしていきたいと考えています。世代間の違いもありますが、世の中の価値観としてこれまでの「消費する」ような飲み方は自分たちに合わないよねという感覚がコロナ禍に伴うライフスタイルの変化でより明確になってきていると感じています。男性も女性も、アルコールに強い人もそうでない人も、仲間との親密な時間や、自分自身を整える時間のよきパートナーとしてアルコールとの関わりを再発見する体験を届けていきたいです。
ーなぜクラフトジンに着目したのでしょうか。
めまぐるしい変化と共にある現代の暮らしのなかで、自分自身を“ととのえる”時間の良きパートナーとしてアルコールとの関わりを再発見いただけたら、とクラフトジンとの出会いを通して考えたのがきっかけです。
クラフトジンは実はアルコールの中でも使う素材の自由度が高いことが特徴です。クラフトジンはベースとなるスピリッツの製造と、蒸留による香り付けの2つの工程があるのですが、蒸留工程で使わなければいけない素材はジュニパーベリーだけであり、その他の香り付けの素材は縛りがありません。例えば土地に紐付いた素材を使うなど、その組み合わせにこだわることで自分たちの思想を伝える「メディア」としてクラフトジンを作ることができます。
私自身はこれまでアルコールが身体に合わなくてなかなか飲むことができませんでした。そのうち実は醸造酒に含まれるアルコール成分が合わなかっただけで蒸留酒は飲めることを知ったのですが、いろいろな種類の蒸留酒を試していく中で、クラフトジンの専門店を紹介してもらいクラフトジンと出会いました。そのお店では、様々な種類のクラフトジンとトニックウォーターが世界中から集められていて、全て香りや味が違うことを初めて知ったのです。
選んで飲んでみると、口に入れた瞬間に「こういう香りがするとリフレッシュするな」「インドに旅行したときに出逢ったスパイスの味が残るな」などと自分の心と身体が香りや味わいを感じようとしていることに気づきました。まるで香水を飲んでいるような感覚で、飲む前から飲む後まで感覚に集中して味わう体験ができました。
また、一人で味わうだけでなくみんなでまったりしながら香りを感じたり談笑しながら飲む体験が、これまでのアルコールを飲むシーンにはない体験でした。アルコールを消費するのではなく、飲むという行為に集中したり、すこし体温があがってきたところで自分と対話することができる時間を楽しむことができました。これこそが自分が作りたい体験であることをすぐに実感しました。
ークラフトジンは、日本ではビールやワインと比べて少し馴染みがない方が多いですよね。
日本にはバー文化が根付いていないことが理由だと思います。アルコールをゆっくり楽しむ環境としてはバーが最も適していますが、日本ではいわゆる飲み会のために大衆居酒屋に行くことがほとんどです。大衆居酒屋には向いていないクラフトジンはマーケティングが難しいため、まだ十分に浸透していないと考えています。
他のアルコールとの比較でいえば、もちろんワインでもゆっくり楽しむ体験ができますが、素材が同じ種類であってその中での違いは詳しい人しか踏み込むことができません。ジンはお茶やお花などみんなが知っている素材を組み合わせて使うからこそ、より親しみを感じながら違いを楽しめるアルコールになれると思っています。
そのために、『HOLON』では薬膳など日本人が親しみを感じやすいハーブティーの素材を多くを使うなど東洋の要素を多く入れてみました。素材だけでなく飲み方についても、ジャスミン茶割りなど新しいけど親しみを感じるような飲み方を提案しています。
自分にとって一番良いバランスを選ぶことができる世界を実現したい
ー『HOLON』を通じてどのような価値観・体験を届けていきたいと考えていますか。
私たちが『HOLON』を通じて実現したいのは、物事を白黒はっきりさせるのではなく自分にとって一番良いバランスを選ぶことができる世界です。今の世界は、なにかに対して対の概念が強く掲げられることが多くなってきていると感じています。アルコールに対するノンアルコールであったり、肉食に対するビーガンなど、それ自体は良い考えであっても、その主義に完全に従うことはやはり息づかれしてしまいます。ラベル付けすることによって語れるものもありますが、個人がラベルにしばられてしまう状況は息苦しいと感じています。どちらの主義かはっきりさせるのではなく、振れ幅がある中でどこが中心なのか、心地良い自分なりのバランスを考えて選ぶことができたら良いですよね。
バランスを考えずにわかりやすいカテゴリーに自分をおいてしまうのは、自分の考えを丁寧に言語化していくことが難しいからです。世の中を俯瞰したり、自分自身と向き合って言語化していくためには、まずバランスを探すという意識をもって、その時間をとることが大切だと考えています。
ーそういった価値観は『HOLON』にどのように反映されているのでしょうか。
価値観はこころや思想など内面の話でしたが、内面も身体の一部であり、身体そのものへのアプローチも同じように大切だと考えています。東洋思想でも、こころと身体の調和は重視されていて、調和が取れていないと連動せずに不調が出てしまいます。『HOLON』の素材選びでは薬膳の観点を大切にしていて、どうしたらこころも身体もリラックスできるのかを考えるところから始めました。リフレッシュやチャージに作用する素材も多くある中で、『HOLON』にはリラックス感に作用する香りや成分を持つ素材を選びました。
素材選びのときにもっとも大変だったのが、いかに低アルコールで美味しいクラフトジンを作れるかというポイントでした。クラフトジンの香り付けにつかうボタニカルの成分は水に対して溶けにくくアルコールに対して溶けやすい性質が多いです。そのため、一般的にはクラフトジンは高いアルコール度数で様々な成分が溶けやすいようになっています。しかし『HOLON』ではアルコールが苦手な方にもできるだけお届けできるように低アルコールにこだわりました。一緒に開発していたメンバーがノンアルコール飲料を作った経験があったこともあって可能性を探り、アルコールに香りが出やすい柑橘系素材を全て無くし、ハーブティーに使われるような水に香りが出やすい成分を多く使うことで、低アルコールを実現できました。そのためハーブティーのようなジンとして楽しんでもらうことができます。
パッケージは世界観のファーストインプレッション
ーデザインやパッケージのこだわりを教えてください。
パッケージは世界観のファーストインプレッションになるので、世界観を届ける役割があると考えています。届いたときに高揚感を感じることができて、中身を開けたときに見てほしい順番に見てもらえることが大切でした。
世界観を伝える一番の手段であるロゴはもちろんですが、開けたときに作っているサンクスカードに『HOLON』の紹介とアートワークを入れて、そこに目が向くようになっています。『HOLON』の世界観をより深く伝えたり、アートと親和性があるんだということを理解してもらいたいと考えて入れました。また、瓶や筒は、そのままインテリアなど違う使い方でも使ってもらえるような設計にすることもこだわりました。
ーcanalをご利用いただいてみていかがでしたか。
まずクラウンドファンディングのリターンの配送をしようと思ったときに検討したのがきっかけです。本体だけでなく、カスタムカットの設計などスピーディーに対応していただいたので安心しておまかせすることができました。おかげさまで、お客様に見てほしい順番に見てもらえるパッケージを実現して、リターンの配送に間に合わせることができました。
ーこれからブランドをどのようにしていきたいか教えて下さい。
まずはアルコールを含むクラフトジンをリリースしましたが、アルコール飲料だけでなくノンアルコール飲料や割材など、幅広く開発していきます。自分と向き合う時間・体験を作るためのドリンクを中心に、体験の幅を広げてくれるものや、体験をより良くしていくものを作っていきたいです。また、クラフトジンを作る中で、香りをとった後のボタニカルなどまだ活用できるものが残ってしまうことも解決できたらとも感じていて、お香や染め物として再活用できないかと考えています。